Google vs FaceookのAI特許ポートフォリオ分析

米国の知的財産活用の事例を分析しました

知的財産はわかる人が少ない分野

私が新卒で入った伊藤忠商事という商社では、

知的財産ビジネスに力を入れていました。

私はPaul Smithというアパレルブランドの、

商標権のライセンスロイヤリティ担当でした。

年商400億円という大きなビジネスだったので、

かなりまとまった金額を英国本社に送金するのが仕事でした。

知的財産ビジネスの裏側と、

勝ちパターンを知る人間は割と限られていると思うので、

自分のそのスキルと経験を活かして、

人工知能業界に貢献できないかと考えています。

IT業界の究極の知財ビジネスは、

ソフトバンクが買収したARMだと思います。

半導体の設計図をひたすら開発する研究者を多数抱え、

特許を取っているので収益は半導体生産者からのロイヤリティ。

ARMは世界中から半導体設計の天才を集めることと、

研究開発が加速するような研究者を保護する環境を整える事で、

PC以外のIoT半導体設計のシェア90%を誇っています。

今後のIoT業界の広がりと、

ソフトバンクが携帯電話以外の幅広いデバイスの根元を握れるシナジーを考えると、

3兆円という買収金額も妥当に思えます。

人工知能(AI)業界のARMの様な素晴らしい研究開発に特化した会社を作れないか。

私はそう考えました。

弊社勉強会を通じて弁理士先生と仲良くなったので、

意見交換の場を設けました。

まず前提として、特許とはビジネスの防衛に使われるのが一般的であり、

特許単独でライセンス契約と絡めて大きく儲けている事例は日本ではほとんどありません。

逆に言えば、特許でお金が絡むのは侵害を発見した場合の裁判で勝訴した場合ですが、賢明な皆さんはお分かりの通り、裁判は相当体力とお金を消耗する上に、勝訴する保証があるわけではないのでお金儲けの方法とは言えないと思います。

とはいえ、2015年私がシリコンバレーでビジネスを行った際に、

特許にこだわっているスタートアップは複数いましたし、

Google/Facebook/AmazonなどITの巨人や、

Stanford/MIT/Harvardなどのアカデミアも特許取得を戦略的に行っているという話も聞くので、

自分なりにリサーチを行い、

海外事例に勝ちパターンを学べないか分析しました。

まずは、

世界のWeb広告業界を牛耳っているGoogle vs Facebookの特許サンプル比較です。

Google: 1週間で45件の特許を取得(年間2400ペース)

http://stks.freshpatents.com/Google-Inc-nm1.php

facebook: 1週間で23件の特許を取得 (年間1200ペース)

http://stks.freshpatents.com/Facebook-Inc-nm1.php

Panasonic, SONY, TOYOTA, HONDAは4–5万件の特許を保有。

Googleの事例5

今週のデータベースから、特許サンプルを抽出しました。

  1. Computer actions based on sensor data from remote devices

リモートデバイスからのセンサーデータによるコンピュータの起動

例) 省エネモードだったデバイス(IoT)がユーザーの行動データを受け取り、デバイスを使いたいという意図を検知して通常モードに戻る。

2. Playing spherical video on a limited bandwidth connection

360度ビデオを限定された帯域幅で再生する

解説) まさにFacebookのOCULUSに対抗しています。

3. Specifying column placement of geographically related content

緯度経度データを使って行の配置の特定を行う

解説) Google SpreadSheetにすぐに実装できるだけでなく、様々なGPSデータに紐付いたデータ(例;スマホで撮った画像)の整形の自動化に使えそうです。

4. Systems and methods for determining application zoom levels

ブラウザ上のズーム率を自動決定する手法とシステム

解説) ユーザビリティを向上させる素晴らしいアイデアな上に、他のIT企業への牽制になっています。

5.Selective compiling method, device, and corresponding computer program product

プログラム製品に応じて適切なコンパイル方法を選択する仕組み

Facebookの事例5

  1. Controllable optical sensing

コントロールできる視覚センサー (最適な状態に変化する事ができる)

解説;直近ではOCULUSに使用されている360度カメラの性能向上に使えそうです。応用範囲が広いですね。

2. Energy based battery backup unit testing

エネルギー量を利用した電池バックアップのユニットテスト技術

解説;Facebookも巨大なデータセンターを保有しており、今後AIとデータが重要になるにつれ、データセンターそのものの競争力も意識する必要があります。直近ではFacebookのクラウドサービスに活用できる技術です。

3.Multidirectional communication system

データのコミュニケーション上で様々な波長シフトが行われており、

可視化できるものや紫外線の物もある。

それらを総合的にコントロールできるシステム。

4. Simultaneous translation of open domain lectures and speeches

著作権フリーの講義やスピーチの同時通訳システム

解説;Facebookは最近リアルタイム中継を推し進めていますが、

その部分がユーザーの各国語に同時通訳できたら素晴らしいと思います。

とはいえ、Facebookの自動翻訳はGoogleに劣るので実装は先になりそうですが、この特許はGoogleへの大きな牽制になると思います。

5. Distributed cache for graph data

グラフデータのキャッシュ化に関する技術

解説; Facebookは以前からユーザー同士の関連性を計算するのにグラフは使っていますので、その改善技術はコアビジネスに大きく貢献しそうです。表示速度が速まるなど、ユーザビリティが向上しそうですね。

結論

限られた時間内での少数サンプルリサーチだったので、

断定的な物言いはできませんが、

Googleの3番目:緯度経度データを使って行の配置の特定を行う

Facebookの4番目:著作権フリーの講義やスピーチの同時通訳システム

は明らかに人工知能技術を意識した特許であり、

IT巨人同士を牽制する意味で、

また自社の今後の技術ロードマップを見据えて特許取得している背景が伺えます。

一般的に、”人工知能は無形技術だから特許が取りにくい”、”取得の際はアルゴリズムそのものを公開する必要があるので、かえってコピー品が増える”と言われていますが、私はそんな事はないと思いました。

引き続き、今度はStanford/MITの特許を調べるとともに、

海外事例に詳しい専門家の意見も聞きながら弊社のロードマップに活かしたいと思います。

きっと日本では事例の少ない、AI領域での特許ビジネスの勝ちパターンがあるはずだと思っています。

追伸:Team AIでは3つのポジションで仲間を募集しています。

ご興味がある方、ぜひ dai@jenio.co (代表 石井大輔)までご連絡ください。

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Google vs FaceookのAI特許ポートフォリオ分析 was originally published in Team AI Blog on Medium, where people are continuing the conversation by highlighting and responding to this story.