(大政孝充氏:前編)デイトレーダーから人工知能エンジニアへ。独学で画像認識技術を習得するまでの道のり【AI people:vol.6】

インタビュー

「AI people」6回目は、株式会社ウェブファーマーの代表取締役を務める大政孝充氏にお話を聞いてきました。ウェブファーマー社はディープラーニング・人工知能関連の開発を手がける企業。このインタビューを実施したのは2017年の秋頃のこと。移転したばかりの新オフィスに伺い、お話を聞きました。

実は大政さん、10年ほどの間「デイトレーダー」として生計を立てていたとのこと。AI関連の技術習得を開始したのは2014年ごろだったと振り返ります。前編では、大政さんがAIエンジニアとしての一歩を踏み出すに至った経緯と、ゼロからのスキル習得をどのように進めてきたのか、詳しく伺いました。

 

デイトレーダーからアプリ開発を経て、AIエンジニアへ

 

— はじめまして、今日はよろしくお願いします! まず、大政さんの現在の取り組みについて教えてください。

 

大政 ウェブファーマーという企業の代表をやっております。受託開発と人工知能案件のコンサルティングを柱に事業を行っております。

 

ー AI関連の事業を立ち上げられたのはいつごろですか。

 

大政 この会社自体は8年ほど前に創業して、当初はアプリ開発を主に行っていました。人工知能がにわかに活気づいてきた3年ほど前に、まずは個人的に研究を始めたんです。その段階では事業化は特に考えておらず、ひたすらいろんなコミュニティーに参加したり学会で研究成果を発表したりしていました。それが2017年に入ったあたりから勉強会を一緒にやりましょうというお話をいただいて、有料の勉強会を開催させていただくようになりました。これはTeam AIさんとは違う勉強会なんですけど。この時期からAIに関連する事業をスタートしました。

一方で4月頃からJenioさんに案件をご紹介いただき、受託開発も行うようになって。コンサルも春頃から複数の企業に提供するようになりました。

 

 

ー 大政さんご自身は、もともとどういったお仕事をされていたんですか?

 

大政 大学卒業後は某省に勤務して、民間企業に転職。そこを辞めたのが30歳くらいの頃です。その頃に、ちょうどデイトレがブームになりまして。ホリエモンとか、村上ファンドとか出てきて、ちょっと世の中がざわついた時期がありましたよね、あの頃脱サラして株式投資を始めたんです。それから株で10年ぐらい生計を立てていました。

ちょうどiPadが出てきた時期にアプリも面白いなと思って、本を買ってきて勉強して(アプリを)作り始めたんです。そうこうするうちに今度はiPhoneが日本に上陸してきて。

ただ、実は収益的には、ここ十数年はほとんど株の利益で暮らしているような感じでしたね。今年に入って、人工知能案件の収益が安定してきたので、現在はこちらに軸足を置いています。

 

時代の流れを読み、新しい技術を学ぶうちにたどり着いたディープラーニング

 

ー 得意領域はどういったところですか。

 

大政 僕は画像系をずっとやってきましたので、この領域が一番得意ですね。分野でいえば、画像認識、物体検出、あるいは動画像の処理ですかね、その辺りを強みにしてまして。

通常の回帰分析や音声認識、時系列データ、シーケンサーのデータの処理なども、昔少し研究していました。深層強化学習も割とずっと研究はしていて、論文を発表したりもしました。事業として手がけた実績はまだないですが、今後着手していきたいですね。

 

ー どのように研究して、技術を習得されてきたんですか。10年ぐらいデイトレ中心で、生計を立てられてきている中で……独学で勉強を始められたんでしょうか

 

大政 そうですね。ディープラーニングは2012年辺りから話題になっていたと思うんですが、僕はその時点ではあまり興味がなくて。先ほど申し上げたとおり、当時はアプリ開発に熱中していたんです。その頃に「アプリとVRを組み合わせたら面白いんじゃないかな」と思いついたことがきっかけですね。

その頃、スマートグラスの技術がだいぶ進んできていて。エプソンのモベリオというスマートグラスが象徴的でした。いわゆる「Google glass」をイメージしていただけるとわかりやすいかもしれません。それを見て、今後アプリからそちらに移行していく未来を予想しました。モべリオもグラスをかけると目の前にAR・VRの画面が表示されます。目の前の世界にバーチャルな世界が重なって、AR的なことができる。これでなにか面白いことはできないだろうかと考えました。そこで画像処理の技術が必要になったんです。

例えば「ユーザーがこの壁を見たら特定のキャラクターの絵を出す」といった指示を組み込む際には、まずその壁を認識する必要がありますよね。床でもなく、天井でもなく、「壁」を見たときにキャラクターを表示する。それってどうやったらいいんだ? というところから始まって、まず画像処理の本を買ってきて読みました。これが人工知能に足を踏み入れた最初の一歩ですね。

当時読んでいたのは割と古い仕組みの画像処理の本。人工知能を使わない、アルゴリズムで処理するような画像処理についてまずは勉強し始めました。

割と簡単なロジックだったので、スムーズに進めることができました。こうして画像処理の基本中の基本の部分を固めていったわけです。

 

ー なるほど。「画像認識の技術が必要だったから学び始めた」んですね。

大政 その頃も「人工知能がこれから来る」みたいな話はなんとなく聞いていたんですが、自分とは関係ないと思っていたんです。

状況が変わったのは2014年に放送大学の大学院に入学したことですね。専攻は文化科学研究科の情報学プログラムで、画像系のゼミに入りまして。ちょうど発表できる場もできたので、半年くらい、アルゴリズムの画像処理をちょっと発展させて自分なりのアルゴリズムを作るという研究をやっていました。だけどなかなか精度が上がらなくて。そんな時、人工知能で処理できるという話をにわかに聞いたのが直接的なきっかけですね。その時点でアルゴリズムからディープラーニングにシフトしました。それが2014年の夏とかそれぐらいだったと思います。

 

放送大学大学院での研究の日々

 

ー 放送大学の大学院ってどんなふうに学ぶんですか。講義はやはり通信教育なんでしょうか。

 

大政 そうですね。授業のほうは、恐らく普通の大学院だと教室に行って講義に出て学ぶのが一般的だと思いますが、その部分をテレビとかラジオで聞いて、自宅で学ぶ、というスタイルです。

試験は試験会場に行って受けるんですけどね。中間のレポート提出などもあるんですけど、基本的にはテレビとラジオで進んでいきます。

それとはまた別に研究のゼミがありまして、そちらのほうは、本部や東京周辺の放送大学の機関に出向いて、集まってゼミをしていました。ゼミによっても違うんですけど、頻繁に開催しているところは、毎週末開催しているようなところもありましたよ。そこで集まって、ゼミ生同士で議論したりもします。

 

ディープラーニング学習のはじめの一歩

 

ー ディープラーニングを学ぶにあたって、まずは何から始めたんですか。

 

大政 そのときはこの『はじめての機械学習』という本を買ってきました。いかにも簡単そうなタイトルじゃないですか(笑)。

ちょうどこの本の最後のほうに「ニューラルネット」という章があって、ここにニューラルネットの内容解説と、プログラムも書いてあるんです。これを読みつつ理解して最後にプログラムを作るっていうことを、まずはやってみました。それでニューラルネットの基礎的なプログラムが作れるようになりました。

あとは定番の、岡谷先生の『深層学習』を参考にしました。この本にはロジックしか書かれていなくてプログラムは一切ないんですが、ロジックを読んだだけでも作れてしまうので感動しましたね。これを1カ月ぐらいかけて、特に6章のCNN、画像処理のコンボリューショナル・ニューラル・ネットワークを作りました。

ただ、自分がゼロから作った場合にはありがちなことですが、途中で学習が進まなくなって。なぜうまくいかないのか分からなくて、作ってはみたけどあまり実用的じゃないなぁ、と考えていました。ちょうどその頃、大手がChainerやTensorFlowなどのフレームワークを続々と公開し出したので、そのほうが効率的だと思い直し、フレームワークを使うようになりました。そうやって少しずつ、できることの幅を広げていった感じですね。

 

ー ありがとうございました。後編では、TeamAIの勉強会や、TeamAI Careerでご紹介したお仕事の感想などについても伺っていきます。

 

 

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